My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「覚えてろよーーっほほほほほ!」
どんどん遠く小さくなっていく船からそんな甲高い怒声だか高笑いが響いてきた気がしたが、私の気のせいだったかもしれない。
「カノン!」
「え!?」
まだ前を向いたままのラグに名を呼ばれ私は我に返る。
「その女を押さえとけ」
「え? ――あっ」
理解したと同時みるみるその背中が小さくなっていく。振り向けばセリーンが今にも彼に飛びかかっていきそうな体勢をとっていて、私は慌ててその前へ出た。
「セリーンストップ!」
私に止められるか自信はなかったが精一杯手を広げ言うと、セリーンはうっと低く呻いてその体勢のまま固まった。
「……カノン」
「ごめん、セリーン」
とても悲しそうな顔をしたセリーンに謝ると後ろでバタバタと足音が聞こえ小さなラグが船内へと入っていくのが見えた。
「え、あ、待ってくださいラグさーーん!?」
そしてその後をフィルくんが慌てた様子で追いかけて行く。彼もラグと一緒に甲板に出ていたようだ。