My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
ゆらゆらゆらゆら。
また私は深い深い水の底にいた。
心地の良い揺れに身を任せていると、しばらくしてピアノの音が聞こえてきた。
「――音、華音……」
そして私を呼ぶ声。
その声の主はもうわかっていた。
(響ちゃん……?)
「華音! よし、聞こえる」
ピアノの音と共に彼の嬉しそうな声が水の中に響く。
「華音、今どこにいるんだ?」
(……今、私は異世界にいるの)
こぽこぽと私が声を発するたびに浮上していくたくさんの泡。
あのときと一緒だ。
「異世界……帰ってこられないのか?」
問われて、私は答えに詰まる。
(……今は、まだ……でも、帰るから……だから)
泡に邪魔されながら、なんとか途切れ途切れにそう答える。
「待ってる……待ってるからな、華音……!」
ごぼごぼごぼごぼ……。
彼の声がたくさんの泡に遮られて聞こえなくなっていく。
そのまま泡に押し上げられるように私の身体はどんどん浮上していき――