My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「カノン、起きろ」
「!?」
急に声が鮮明に聞こえてハッと目を開ける。
木組みの天井が見えて、ここが宿の一室であることを思い出す。
(また……あの夢)
もう朝かと思ったが、部屋の中はまだ暗い。そのまま視線を巡らせると窓際に人影があった。
「セリーン……?」
彼女の手に愛剣が握られていることに気付く。
「モンスターだ」
「えっ!?」
私は慌てて跳ね起きる。
窓から外を見下ろしながらセリーンは潜めた声で続けた。
「1、2……10匹はいるな。奴ら、ここに集まってきているようだ」
「な、なんで……」
「わからないが、この宿が狙われているのは確かだ。主人はまだ気づいていないみたいだな。騒ぎにならんうちに片づけてこよう」
セリーンは軽く言いながらドアの方へと向かう。
「セリーン!」
「大丈夫だ。すぐに戻ってくる」
彼女は私を安心させるように笑顔で言うと静かに部屋を出て行ってしまった。