My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
(なんで、ここに……?)
ドクドクと煩い心臓を押さえながらベッドを下り、恐る恐る窓から外を覗き込む。
すると確かに昼間とはまた違う猪のような獣が数匹宿の周りをうろついているのが見えた。その目がらんらんと光っていてゾっとする。
(もしかして――)
ドンドンっとそのとき部屋のドアが叩かれびっくりして振り返る。
「入るぞ」
ラグの声が聞こえてきてほっと肩を下ろす。
「うん!」
返事をするとすぐに彼が部屋に入ってきた。
「今、セリーンが」
「あぁ」
ラグは頷きながらこちらにやって来ると窓から下を覗き込んで舌打ちをした。
「ブゥは?」
「あのまま、ずっとここで震えてやがる」
彼がポケットに軽く触れて言う。ということはラグはきっと眠れていないのだろう。
外のモンスターたちをもう一度見下ろしながら、私は先ほど頭に浮かんでしまった最悪な可能性を口にする。
「モンスターたちが本当に怯えているとして、その原因がここにあるってこと……?」
「……」
ラグは無言でただ眉間に深く皴を刻んだ。