My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
――数日前から突然街に出没するようになったモンスター。
5年前からこの街に住んでいるという主人やこの宿自体に原因があるとは思えない。
原因があるとすれば、それは……。
「あ、セリーン!」
一匹のモンスターが急に吹っ飛び、彼女が宿の外へ出たのだとわかった。
窓を開けて身を乗り出すとその後ろ姿が見え、そんな彼女をモンスターたちが一斉に取り囲んだ。
「だ、大丈夫かな……」
セリーンの実力はわかっているけれど、モンスターの数を見てどうしても心配になってしまう。
「心配すんだけ無駄だ」
ラグが呆れたように言った瞬間、セリーンが動いた。
目の前にいたモンスターを2匹いっぺんに大剣で薙ぎ払うと彼女はそのまま通りの向こうへと駆け出した。
「え!?」
それを追いかけていくモンスターたち。あっという間に彼女たちの姿は夜の闇に溶け込み見えなくなってしまった。
「どうして」
「この場所に死骸が集中してたら街の連中はどう思う」
「あ……」
それを聞いて納得する。セリーンはモンスターたちをおびき寄せながら場所を分散させて倒すつもりなのだ。