My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
28.レーネの悲劇
「……正直言うと、出会ったばっかりの頃は少し怖かったよ。いつも怒ってるし」
ぴくりと彼の眉が跳ねて慌てる。
「で、でも、ブゥと同じで、離れたいと思ったことは一度もないよ!」
彼が怒るのは、大抵いつも私を心配してくれているときだと今ならわかるから。
心を落ち着かせて続ける。
「前にも言ったけど、ラグがいてくれて本当に良かったと思ってる」
うっかり気持ちまでこぼしてしまいそうで、慎重に言葉を選びながら答えていく。
「ラグがいなかったら私この世界で途方に暮れていたと思うし、だから一緒にいてくれて本当に感謝してるんだ」
するとラグは照れてしまったのだろうか、「そうか……」と小さく呟いて視線を逸らした。
そんないつもの彼を見て、少しほっとする。