My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「違う! オレはただ……っ」
でもラグはそこで我に返ったように目を大きくして、それからふいと視線を外してしまった。
「ただ、助けたかった……だけだ」
なんとか聞こえたその低く小さな声に、胸がざわつく。
(助けたかった……?)
「私も今まで旅をしていて色々な噂を耳にしてきたが、この街が何か恐ろしい武器を作ろうとしていたという話は本当なのか?」
「え?」
思わず声が出ていた。
――恐ろしい、武器?
昼間、自警団の詰所で見たたくさんの武器を思い出す。
少しの沈黙のあと、ラグが口を開いた。
「少なくともオレは、そう聞かされていた。……だから、調査に行くと」
「そして、それが事実だったわけか」
「……燃やせと言われた。それが戦争の終結を早めることになるからと」
アルさんから聞いた話を思い出す。
戦争を終わらせるために、彼が張り切ってその任務に就いたと――。
「オレは術を使って……気づいたら、街も、森も、すべて……火に包まれていた」