My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「お前がいれば、大丈夫だ」
「!」
さらっと穏やかな目をして言われて不覚にも胸が跳ねる。
一気に顔に熱が集中するのがわかって、慌てて口を動かす。
「そ、そっか。セリーンもいるしね! えっと、じゃあ朝ご飯食べに行こう!」
私はそそくさと回れ右をして階段へと向かった。
(び、びっくりした……)
昨夜といい、気持ちを自覚してから彼のこういう言動は頗る心臓に悪い。
――ありえないとわかっているのに、同じ気持ちだったら……なんて、淡い期待を抱いてしまう。
(いやいやいや、ないないない)
階段を下りながら小さく首を振る。
彼にとって私は呪いを解くのに必要な存在。ただそれだけだ。――そう改めて自分に言い聞かせる。
昨夜セリーンが言っていたように今の彼は精神的に相当参っているから、だからこんな私でも頼りにしてくれているのだろう。
(それだけでもう十分だよ)
と、彼がドアを閉め私に続いて階段を下りてくるのがわかって、顔の赤みが引いているか確かめるためにそっと頬に手を当てた。