My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
宿を出た私たちはその足で自警団の詰所へ向かった。
少し肌寒いけれど雲一つない気持ちの良い朝だ。なのにやはり人通りはほとんどなく、誰ともすれ違わないまま私たちは詰所に到着した。
「おはようございます」
詰所の中も誰の姿もなくてそう声をかける。
すると、奥から慌てた様子でパシオさんが顔を出した。
「おはようございます! 皆さん、昨日は本当にありがとうございました!」
その髪が少し乱れていて、ひょっとしたら奥で仮眠をとっていたのかもしれない。昨夜あんなに遅くまで仕事をしていたのだ。
セリーンも同じことを考えたのだろう。
「すまん、早過ぎたか」
そう申し訳なさそうに言った。
でもパシオさんはにこやかに首を振った。
「いえ、問題ありません。こちらへどうぞ」
促されて私たちはカウンター前の椅子に腰かけた。