My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「――ん、カノン?」
「!?」
急に声が近くクリアに聞こえてパっと目を開く。
心配そうな瞳が私を見下ろしていた。
呼吸を忘れていたような気がして、大きく息を吸ってゆっくりと吐きだしてから、その名を呼ぶ。
「セリーン……?」
「大丈夫か? 随分うなされていたぞ」
薄暗い部屋。木組みの天井。ぎぃぎぃという船体の軋む音。
――そうだ。今私は船に乗っていて……。
(じゃあ、今のは……夢?)
ピアノの音も、懐かしい声も、どちらも酷くリアルだった。
まるで本当に彼と会話していたような……。