My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「そら」
「え?」
いきなり横から視界に入ってきたものに私は目を見開く。
先ほど見た指輪の入った小箱。それをラグがこちらに差し出していた。
「お前が持ってないと怪しまれんだろ」
いつも以上にぶっきらぼうな言い方。
震えそうになる手でそれを受け取って、見た目よりも重みのあるその小箱をじっと見つめる。
「ありがとう」
思わず出てしまったお礼の言葉に、案の定ラグは声を荒げた。
「い、言っとくが、それは」
「わかってるよ!」
ラグの言葉を遮って私は笑顔で振り向く。
「だって綺麗だったから、すごく嬉しい!」
――わかっている。
《誓い》とか《永遠の愛》とか、そんな意味は全くないってことくらいちゃんとわかっている。
ただ、理由はなんであれ、ラグから指輪をもらったという事実が嬉しかったのだ。