My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「もう何も問題ない! こやつらが、片づけた!」
いきなりこちらを指差されて驚く。
「だからお前らは時間まで寝ていて構わん!」
そう怒鳴るように続けるとアジルさんは少しふらふらとした足取りで建物の正面へと去っていく。ラグはその場から動かない。
窓から覗いていた彼らは顔を見合わせていたが、こちらを気にするようにそのまま窓を閉めてしまった。
アジルさんの姿が見えなくなって、セリーンが短く息を吐いた。
「ここに何かあるのは間違いなさそうだな。しかし、まさか奴が術士とは」
「ごめんなさい、私つい名前……」
ラグに謝罪するが、彼は静かに首を横に振り額に布を巻き直した。
「結果、良かったんじゃないか。あの反応は普通ではなかったからな」
確かにあの怯えようは単に“ラグ・エヴァンス”を前にした反応とは違う気がした。
(アジルさんだって同じ術士なのに……)
「それにあの様子だと、術士ということは周囲に秘密にしているようだな」
「うん」
モンスターを倒したのは彼自身なのに、私たちだということにしていた。
(ラグのことも言わなかったし、それに)