My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
彼女がいれば私が嫁のふりなんてしなくて良かったのだ。そうすれば「姐さん」なんて慣れない呼び方をされることもなかったのに……そう思いながら少々乱雑に皆が去ったあとの食堂を片づけているときだ。
「カノン」
見れば先ほど食堂を出て行ったはずのグリスノートが入り口からこちらに手招きをしていた。
まだ少しムカムカしながらも彼の前まで行くと、肩に乗ったグレイスが私を見下ろし可愛らしく首を傾げて結局また顔が緩んでしまった。
「なんですか?」
「片づけが済んだら甲板に出て来てくれ。大事な話がある」
そう耳打ちすると、彼はにっと笑ってすぐに行ってしまった。
(大事な話……?)