My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
私たちは顔を見合わせ、そんな彼女についていく。
詰所の中は外が嘘のようにシンと静まり返り他には誰もいなかった。モンスターたちは建物の中にまでは入ってこないみたいだ。街の人たちもきっと家の中で怯えているのだろう。
マルテラさんについてカウンター奥の小部屋に入り、私は息を呑む。
仮眠室だろうか、ベッドに真っ赤に染まった包帯を胸に巻いたパシオさんが力なく横たわっていた。
その顔には玉のような汗がびっしりと浮かび、はぁはぁと浅い呼吸を繰り返し酷く苦しそうだ。
(でも、ラグの術できっと……!)
「――ねぇ、なんで?」
「え?」
ベッド脇に立つマルテラさんが、パシオさんを見下ろしながら小さく呟いた。