My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「なんで、パシオがこんな目に遭うの?」
「マルテラさん……」
大丈夫ですと続けようとして、その強く握られた拳が小刻みに震えていることに気付く。
「やっぱり、あなたがこの街に来たからなの……?」
彼女はゆっくりとこちらを振り返り、怒りに染まった顔でラグを睨み上げた。
「だって、おかしいじゃない。あなたが来るまで、こんなこと一度もなかったわ」
怒りだけじゃない、その眼には深い悲しみの色が宿っていた。
「消えてしまった街を皆で頑張ってここまで取り戻したのに、なんで今になってまた……?」
「……」
ラグは何も答えない。
私も、何も言えなかった。
マルテラさんが首を傾げる。
「あなたはまた、私の大事な人を奪っていくの……?」
じわりと、その赤くなった眼のふちにたくさんの涙が溢れた。