My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「……でも、君が生きていてくれて、本当に良かった」
そうしてラグはぎこちない微笑みを浮かべた。
マルテラさんが瞳を大きくして口を開きかけた、そのときだ。
「マルテラ……」
そんな小さな声が聞こえて、マルテラさんが急いで振り返る。
「パシオ! 気が付いたの!?」
パシオさんの手がゆっくりと彼女に伸びて、マルテラさんはそれをしっかりと握り締めた。
重い金属音を立てて彼女の足元に短剣が落ちる。
やがてマルテラさんのすすり泣く声が聞こえてきて、ラグはほっとした様子でそんな彼女に背を向けた。
私はそんな彼を支えて、その部屋を出た。