My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
いたいの いたいの とんでいけ
お山の向こうへとんでいけ
いたいの いたいの とんでいけ
海の向こうへとんでいけ
元々の節を少しだけアレンジして、私は歌う。
本来は、痛がる小さな子供にかける優しい“まじない歌”。
今私の目の前にいるのは確かに子供で。
本当は深く傷ついて痛いはずなのに、絶対に痛いとは言わない意地っ張りな子供で。
だからこれは、そんな彼のための優しい“おまじない”だ。
銀に輝く自分の髪を見て、私は続ける。
見えるキズも 見えないキズも どこか遠くへとんでいけ
キレイに消えて なくなって
ほら もういたくない いたくない
見えるキズも 見えないキズも どこか遠くへとんでった
キレイに消えて なくなった
ほら もういたくない いたくない
「……オレは、小さなガキかよ」
そんな憮然とした声が聞こえて目を開けると、呆れたような青い瞳が私を見下ろしていた。
「だって、今は子供だし……」
そう小さく言い返すと彼は短く息を吐いてからすくと立ち上がった。
「ま、まだ動いちゃ――っ」
だめだよと続けようとして、彼が私の目の前で服をたくし上げてびっくりする。べっとりと鮮血で濡れた肌が露わになって思わず目を背ける。
「まさか、治癒も出来るとはな」
「え?」
恐る恐る見返してみると、血はそのまま残っているけれど傷があったと思わしきその場所は完全に塞がっていた。