My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
両手をゆっくりと握りしめて、その手のひらがラグの血でべったりと濡れていることに気付く。
薬指にはまった彼からもらったリングも、綺麗な青い石も、赤く染まってしまっていて。
皆眠っているのだと知らなければ、この場で一人こうして立っている私は完全に悪役……いや、まるで死神のようだった。
そのときふと、エルネストさんの作曲ノートに“死”という恐ろしいタイトルの楽譜があったことを思い出す。
……もしかしたら、セイレーンの力は私が思っているよりずっと恐ろしいものなのかもしれない。
ぞくりと全身に震えが走って、自分を落ち着かせるために一度深呼吸をする。