My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「ぶぅ~」
「え?」
ブゥの鳴き声が聞こえた気がして振り返る。
そんなはずはない。静か過ぎて聞こえた幻聴かもしれない。でもじっと今来た道を見つめていると。
「ぶぅ~~っ」
「ブゥ!?」
確かに白い小さな蝙蝠が一生懸命翼を動かしてこちらに飛んでくるのが見えた。
「なんで……」
だってまだ日は高くて、ブゥはいつもなら寝ているはずの時間で。
それに先ほどの私の歌で他のモンスターたちは皆眠ってしまったのに。
(ブゥには効かなかったってこと……?)
「ぶぅ~ぶっ」
ブゥは私の目の前までやってくると、嬉しそうにその場でくるりと一回転した。
「ついて来て、くれたの?」
「ぶーうっ」
その元気な鳴き声にまた涙腺が緩んでしまった。
「ごめんね、私、ラグを眠らせちゃった……っ」
「ぶぅ~~?」
でもラグの相棒であるブゥはそんな私の顔を心配そうに覗き込んできてくれた。そのつぶらな瞳に私を責める色はないように思えて。
溢れた涙を拭って笑顔を作る。
「ありがとう、ブゥ。一緒に来てくれる?」
「ぶぅ~!」
ブゥは任せてと言わんばかりに勢いよく高く飛んでから私の頭の上にふわり着地した。
「でも気を付けてね。これから坑道の中を調べるんだ。危なくなったらすぐに逃げてね」
「ぶっ」
すぐ頭上から可愛らしい返事が降ってきて、今度は自然と笑みがこぼれた。
(眠っていたから歌が聞こえなかった……とかかな?)
なぜかはわからないけれど、今はその存在がとても有難かった。