My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
35.坑道探検
「ぅひゃっ!?」
ぴちゃん、と冷たい雫が丁度鼻の頭に落ちてきて思わず変な声が出てしまった。
その声は静かな坑道内に反響して消えていった。
「ぶぅ?」
「ご、ごめん、大丈夫。水が落ちてきてびっくりしただけ」
こちらを覗きこんできたブゥにそう言って苦笑する。
岩肌剥き出しの天井からこうして時折水が滴り落ちてくるのだ。
足元もぬかるんでいて気を付けて歩かないとすぐに滑って転んでしまいそうだった。
今は私ひとりで、転んでも誰も支えてはくれないし呆れ顔で注意してくれる人もいない。
(でも、ブゥがいてくれる)
彼の存在が本当に心強かった。
もうどのくらい進んだだろう。途中何度か梯子を下りて随分下層の方に来た気がするけれど入口からの距離はもうわからなくなっていた。
坑道の中は灯りなどなく真っ暗で、でも私の髪が未だに銀に輝いているおかげで視界はそこまで悪くなかった。