My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
そういう場所があるということは元いた世界の映像や写真で見て知っていたけれど、実際に目にするのは初めてで。
(ううん、こんな綺麗な場所、あっちの世界にあるわけない)
青く輝いて見えるのは天井から壁、湖の底に至るまで、先ほど見た青い水晶がまるで剣のようにびっしりと生えているためとわかった。
そのあまりに神秘的で美しい光景に声が出なかった。
ぴちゃん、ぴちゃん、と天井から落ちた雫が水面に波紋を描いていく音だけが、しばらく響いていた。
ふわふわと湖の方へ飛んでいくブゥの後ろ姿を見て、私は我に返る。
「ブゥ、待って!」
発したその声がうわんと大きく響いた。
まるで天然のホールだ。ここで歌ったらきっと綺麗に声が響くだろうと思った。……今は恐くて試せないけれど。
ブゥを追って慎重に水際に近づいていく。
彼は水底から天井まで繋がった柱のような水晶の前に留まっていた。
(あそこに何か……、!?)
と、その前に見覚えのある人が倒れていて驚く。
「アジルさん!?」