My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
声を掛けながら駆け寄るが、彼はうつ伏せの状態で静かに寝息を立てていた。
彼も私の歌のせいで眠ってしまったのだろうか、帽子は外れ隠していた額の紋様が見えてしまっていた。その手元には古そうな鍵束が落ちていて。
(やっぱり、そこの扉を開けたのはアジルさんだったんだ)
なぜ彼はここに来たのだろう……そう思いながら顔を上げて、私は大きく目を見開く。
ブゥが見ている青い水晶柱の中に、人影があった。
思わず悲鳴を上げそうになって両手で口をふさぐ。
(まさか……)
水際ギリギリまでゆっくりと足を進めて、震える声で呟く。
「エルネスト、さん……?」
何度も見た彼の姿がそこにあった。
肩まで伸びた金髪。整った優しい顔立ち。目を閉じていて今その碧眼は見えないけれど、いつも私たちの前に現れる彼の姿そのままだ。
「待っていたよ、カノン」
「!」
優しい声が辺りに響く。
いつもの、幽霊のように身体の透けた彼が、水晶柱の前にぼんやりと浮かび上がった。