My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
36.偽りの伝説
「よくここまで来てくれたね」
会いたかった人が目の前にいる。
この世界に来てからずっと、ずっと探していた人。
彼に会うためにこの世界中を旅して、やっと辿り着けた。……なのに。
(なんで、あんまり嬉しくないんだろう……)
くすっと彼が眉を下げて笑った。
「驚かせてしまったみたいだね」
「……っ」
何か答えようと思うのに、訊きたいことがたくさんあるのに、喉の奥が震えてうまく声が出てこない。
彼はそんな私にもう一度綺麗に微笑むと、背後の水晶柱を振り返った。
「これが、僕の本体だよ」
――僕の本体を助けてもらいたいんだ。
彼から最初に言われた言葉を思い出す。
「あなたは、一体……」
なんとか口から出た最初の問いはそれだった。