My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
すると彼女はふっと口端を上げ言った。
「メガネに叩き起こされてな」
「ちょっ、叩いてなんかないだろセリーン!」
「それでブゥがここまで案内してくれた」
そういえば、いつの間にかブゥの姿が見えなくなっていたことに気付く。
「だが、奴はどうやっても目を覚まさない」
「……っ」
アルさんがすぐそこの青い柱にラグを凭れさせるのを見て、ズキリと胸が痛む。
そんなラグの頭の上でブゥが心配そうに相棒を覗き込んでいた。
「あんたが、金のセイレーンか」
「ん?」
水際ギリギリまで進み出たグリスノートがエルネストさんを見上げて興奮したような顔で言う。その肩にはグレイスも乗っていて。
「すげぇ、マジで会えるとは思わなかったぜ」
「喜んでもらえて光栄だよ」
ぽん、と肩に手を置かれ、見上げるとアルさんの笑顔があった。
「久しぶり、カノンちゃん。来るのが遅くなっちゃってごめんな」
「アルさん……」
久しぶりに見るその安心する笑みにじわりと目に涙が浮かぶ。