My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「ごめんなさい、私、ラグを……っ」
ラグを頼むって言われていたのに。
なのに私は彼を傷つけて、あげくに……。
「セリーンから大体聞いたよ。よくひとりでここまで辿り着けたなぁ。頑張ったな、カノンちゃん」
そうしてアルさんは少し乱暴に頭を撫でてくれた。
……セリーンもアルさんも、私がしてしまったことを怒りもしない。
それどころかこうしてまた傍にいてくれる。なんて優しくてあったかい人たちなんだろう。
「ちなみに俺は、皆が海賊に攫われたって聞いて急いで城を出て、なんやかんやあってここまで辿り着いたって感じかな。んで、その途中そいつを拾った」
アルさんが指したのはグリスノートだ。彼がこちらを振り向いてにいっと悪い顔で笑う。
「言ったろ? 絶対に追いつくから待ってろって」
「――っ!」
色々思い出して、どんな顔をしていいかわからずお蔭で涙が引っ込んでしまった。
と、アルさんがそんな私の前に出てエルネストさんを見上げた。
「さて、話はさっき大体聞かせてもらったけどさ。カノンちゃんにそんなやべぇ歌、絶対歌わせねぇし、他にもそこの弟分のことであんたには訊きたいことが山ほどあるんだ。悪ぃけど、ちーと付き合ってくれよな」