My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「10年前、儂はこの場所を偶然見つけて、吸い寄せられるようにしてその美しい人が眠る石に触れてしまった。すると突然、奇跡の力を授かった」
アルさんが、息を呑む。
「授かったって、まさか、術士の力を手に入れたってことか!?」
「!?」
術士は万物に好かれた特別な存在で、それは生まれついての才能だと前にラグが話してくれた。
「んなことが可能なのかよ」
グリスノートも流石に驚いた様子だ。
アジルさんは続ける。
「儂はこのことをすぐに責任者に伝えた。するとその話は当時このあたりを治めていた領主の耳にも届き、……あ、あの人は、とんでもないことを考えた」
――あの人。朝にもアジルさんは言っていた。あの人の言う通りにしていただけだ、と。
(当時の領主のことだったんだ)
そして彼は絞り出すような声で言った。
「あの人は、この場所で魔導術士を量産し、最強の戦闘部隊を作り出そうと考えたんだ」
「!?」