My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「――ちょ、ちょっと待ってくれ!」
アルさんが困惑したように声を上げた。
だが勢い付いたアジルさんは止まらなかった。
「儂は命からがら逃げのびたが、あの人も仲間も街の皆も、みんなみんな儂の目の前で炎に焼かれ死んでいった。儂は天罰が下ったんだと思った。奇跡の力を争いの道具として使おうとしたからだと。だから儂にもいつか天罰が下ると思い、そのときを待った。……だが、なぜか儂らの計画が表沙汰になることはなく、全てはストレッタのラグ・エヴァンスの仕業ということになっていた。儂は赦されたのだと思った。だから、儂は死ぬまでこの事実を隠し通し、この場所を封印することにしたんだ」
アジルさんが話し終えると、空洞内はしんと静まり返った。
(じゃあ、ラグは……)
いつの間にか強く握りしめていた手が震えた。