My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「そろそろ夜明けだが、また気分が悪くなったか?」
「え? あ、ううん、大丈夫。変な夢、見ちゃって」
言いながら私はハンモックからまず足を下ろしてゆっくりと上体を起き上がらせた。
このハンモック、簡単そうに見えて実はすごく難しく最初は何度かかっこ悪くひっくり返って落ちてしまった。だから慎重に。
「夢か。誰かを呼んでいるようだったが、例の想い人か?」
「お、想い人じゃないけど。夢の中で話せた気がして……」
「そうか。帰れる日が近いからかもしれないな」
セリーンが優しく微笑んでいてどきりとする。なんとなく視線を落として私は答える。
「だったら、いいな。――あ、リディは? もうギャレー?」
元は物置だった暗く狭い部屋を見渡すが、その姿がない。
「あぁ。少し前に待ちきれない様子で出て行ったぞ」
セリーンが小さく笑って言った。
窓のない部屋だと今が朝か夜かもわからないが、イディルを出てから10日目の朝が来たのだ。