My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「……」
エルネストさんは肯定も否定もせず静かに瞳を閉じていた。
きっとおばあちゃんのことを思い出しているのだろうと思った。
(おばあちゃん……)
元の世界に戻れても、もうおばあちゃんに話を聞くことはできない。
それが酷く悲しくて、もどかしかった。
「――ん?」
流れた沈黙を破ったのはまたもグリスノートだった。
「じゃあよ、カノンはあんたの孫ってことになんのか?」
「へ!?」
思わず素っ頓狂な声が出てしまっていた。
だがエルネストさんは苦笑しながら首を横に振った。
「いや、それはないよ。僕は彼女を愛していたけれど、この想いを伝えたことはなかったからね」
(それって、エルネストさんの片想いだったってこと……?)
つきりと胸が痛んだ。
グリスノートが舌打ちをした。
「んだよ、もしそうだったらカノンがこの世界に残る理由になると思ったのによ」
「え……?」
そちらを見れば彼の何か言いたげな視線とぶつかって――。
「っとぉーー!!」
「!?」
急なアルさんの大声にびっくりする。彼はラグの方を指差し言った。
「そろそろさ、アイツ起こさねぇか?」