My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
 グリスノートが大きく舌打ちをして。

「その程度だったのかよ……見損なったぜ、クソが!!」

 吐き捨てるように言って彼はラグから離れていった。

(なんで……?)

 私の歌のせいだと言っているのに、グリスノートがなぜそんなにも怒るのかわからなくて呆然としていると、ラグと目が合った。
 しかしそれはすぐに逸らされて、ズキリと胸が痛む。

(――でも、これでいいんだ)

 私は一度目を閉じてから笑顔を作ってエルネストさんの方を見た。

「あとは、エルネストさんをそこから助け出すだけですね。私に出来ますか?」

 そういう約束だった。
 私が帰るための楽譜をくれる代わりに、助け出して欲しいと。
 でも、エルネストさんは笑顔で首を横に振った。

「え?」
「僕はもういいんだ」
「いいって……?」

 訊くと彼は水晶柱の中で眠る自分の身体を見つめた。

< 409 / 440 >

この作品をシェア

pagetop