My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】

41.銀のセイレーンの歌


 最初の曲目は、港町ルバートで歌った平和を願う歌。
 歌い始めた途端、不思議なことが起きた。
 まぶたの裏に、まるで映画のスクリーンのようにあの街の風景が広がった。
 私は風になった気分でその街並みを通り抜けていく。
 すると道行くたくさんの人々が驚いた顔で私を振り返った。私の歌声がちゃんと届いているのだ。
 あのときとは違い誰も逃げたりしなかった。皆足を止め、私の歌に聴き入ってくれているようだった。
 歌は不吉なものなんかじゃない、素晴らしいものなのだと気づいて……思い出してほしくて、私は歌った。


 次は、フェルクレールトの皆で作ったあの遊び歌だ。
 風景が切り替わる。そこは鬱蒼とした森の中。あのムっとした暑さを肌で感じた気がした。
 特徴的なテントが見えてきて、そこから慌てたように出てきたのは白髪の少女。
 その赤い瞳と目が合う。彼女、ライゼちゃんが嬉しそうに微笑んで私に大きく手を振ってくれる。
 続いてラウトくんとヴィルトさん、そしてブライトくんが集まって来て、みんな一緒にあの歌を歌ってくれた。
 そのまま私は村の方へと飛んでいく。農園で作業をしていた皆が驚いたように顔を上げて、子供たちが興奮したように顔を見合わせて大きく口を開く。
 フェルクレールトの大地に再びあの大合唱が響くのを、私は風になって聴いていた。
< 411 / 440 >

この作品をシェア

pagetop