My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
振り向くと、皆なぜか涙を浮かべていて、ただラグだけはいつもの仏頂面でつい笑いそうになってしまった。
「歌ってすげぇな。こんな綺麗なもんがこれまで不吉とされてたなんてなぁ」
「だろ!? やっぱ歌は最高だよな!」
赤くなった目を擦っていたアルさんに、グリスノートが自慢げに言う。
「カノン、本当にこれでいいのか……?」
気遣うように首を傾げたのはセリーンだ。
「うん。エルネストさんもきっと満足してくれたと思うんだ」
「そうではない!」
その怒ったような顔を見て、あぁと小さく笑う。
彼女は私のラグへの気持ちを知っている。だからきっと、全部見抜かれているのだろう。
と、そこで思い出す。
「セリーン。これ、あとで返してもらっていいかな」
私は薬指から指輪を外す。彼からもらった、彼と同じ色の石がついた指輪。