My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
そしてアルさんは私に優しい笑顔を向けた。
「ラグのこと、本当にありがとな」
私は首を振る。
「ほんとはこんなの嫌だけどさ、カノンちゃんが決めたことなんだもんな」
「はい」
「あぁ~、俺もっといっぱいカノンちゃんの歌聴きたかったなぁ」
本気で悔しそうなアルさんに私は小さな声で言う。
「今度はアルさんが歌ってください」
「俺が?」
「花束と一緒に愛の歌を贈るなんて、どうですか?」
するとアルさんは目をキラキラと輝かせてビシっと親指を立ててみせた。
――そして、私は最後にラグの方を見つめる。
彼も私の方を見てくれていた。
本当はもっと傍に行きたかったけれど、これ以上近づいたら決心も精一杯の笑顔も全部崩れてしまいそうで、私はこの場でお礼を言うことにした。
「ラグ、今までありがとう。ラグがいなかったら、私絶対ここまで来れなかったと思う。いつも助けてくれて本当にありがとう」
彼がいたから、この何もわからない異世界でなんとか生きてこられた。
彼と一緒にこの世界を旅して、辛いことも勿論あったけれど、たくさんの出会いがあって、元いた世界では経験できない、たくさんのものを見て、知ることが出来た。
彼がいたから、この世界がこんなにも愛おしく思える。