My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
そのときブゥが私の方に飛んできて、目の前でくるんと一回転した。
「ブゥも、ありがとう。ラグのこと、これからもよろしくね」
ブゥは任せてというようにその鼻をぶっと鳴らしてから再び相棒の元へと戻っていく。
もう一度ラグと目が合って、私は頭を下げる。
「最後まで勝手なことして、ごめんなさい」
きっと彼は今、私のせいでひとり混乱の中にいるはずだ。
――あのとき、私は無意識のうちに願ってしまったのだろう。忘れて欲しいと。
そうすればこの胸の痛みが少しは和らぐはずだと思ってしまったのだ。
(でも、これでいいんだ)
彼からのさよならの言葉は聞きたくない。きっと耐えられない。
どうしようもなく寂しいけれど、こうして笑顔でさよなら出来る。
あのラグが視線を逸らさずにずっと私を見てくれていて、それでもう十分だと思った。
――さぁ、これで最後だ。
最高の笑顔で彼にさよならしよう。
声が震えてしまいそうになるのを必死で抑えながら私は言葉を紡いでいく。
「さようなら。あなたのことは一生忘れない」
忘れられていても、それでも。
「大好き」
彼の深い青が大きく見開かれるのを見てから、私はあの歌を口ずさむ。
元いた世界へ、自分の本当の居場所へ帰るための歌を――。