My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】





 歌い終えてゆっくりと目を開けると、風景が一変していた。
 そこはとても見慣れた部屋。自分のベッド、使い慣れた机、そしてピアノ。全部、以前と変わらないままの私の部屋だ。
 帰ってきたのだと実感して、きっと、ほっとしたからだろう。
 ぼろぼろと止め処なく涙がこぼれてくる。

「言うつもり、なかったんだけどなぁ」

 我ながらなんてズルいのだろう。
 答えなんか聞きたくなくて、ただ自分の気持ちだけぶつけて帰ってきてしまった。
 彼からしたら記憶にない子からいきなり「大好き」なんて言われて。
 彼の困った顔が浮かんで、泣きながら笑ってしまった。
 ……本当はもっと彼の色んな顔が見てみたかった。
 怒った顔も、照れた顔も、笑った顔も、もっともっと、傍で見ていたかった。

「好きだったなぁ」

 ひとり呟いて、私はまた泣いた。


 ――こうして、私の長いようで短い異世界の旅は幕を閉じたのだった。





 最終章 了





   To the epilogue...

< 420 / 440 >

この作品をシェア

pagetop