My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
歌い終えてゆっくりと目を開けると、風景が一変していた。
そこはとても見慣れた部屋。自分のベッド、使い慣れた机、そしてピアノ。全部、以前と変わらないままの私の部屋だ。
帰ってきたのだと実感して、きっと、ほっとしたからだろう。
ぼろぼろと止め処なく涙がこぼれてくる。
「言うつもり、なかったんだけどなぁ」
我ながらなんてズルいのだろう。
答えなんか聞きたくなくて、ただ自分の気持ちだけぶつけて帰ってきてしまった。
彼からしたら記憶にない子からいきなり「大好き」なんて言われて。
彼の困った顔が浮かんで、泣きながら笑ってしまった。
……本当はもっと彼の色んな顔が見てみたかった。
怒った顔も、照れた顔も、笑った顔も、もっともっと、傍で見ていたかった。
「好きだったなぁ」
ひとり呟いて、私はまた泣いた。
――こうして、私の長いようで短い異世界の旅は幕を閉じたのだった。
最終章 了
To the epilogue...