My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「歌が不吉とされた異世界かぁ。俺も今すぐその世界に行って音楽を広めたいなぁ。あ、でもピアノもないのか。ならまずピアノを作るところから始めないとな!」
くすくすと笑う私を見て、響ちゃんは気遣うように言った。
「でも華音、本当に大丈夫か?」
両親は絶対に信じてくれないと思ったけれど、意外にもすんなりと受け入れてくれた。
「母さんがね、昔そんな話をしてくれたことを思い出したんだ」
そう言ったのはお父さんだ。
「おばあちゃんが?」
「だから、華音の話も信じるよ」
そう言ってお父さんは少し寂しそうに微笑んだ。
「……おばあちゃん、そのときのことなんて言ってた?」
「大切な人たちに出会ったって。でも、ひとつ心残りがあるって言ってたな」
「心残り?」
「一番大切な人に、酷いことをしてしまったんだって」
一番大切な人に……。
「帰って来てくれてありがとう、華音」
「でも華音、あなた本当に大丈夫?」
お父さんとお母さんが心配そうに私を見つめていた。
――あの頃、私はそんなに酷い顔をしていたのだろうか。