My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「術でどうにかするって、そんなこと出来るのかしら」
「風が起こせるんだ。逆に止めることも出来るのかもしれんな」
セリーンが天井を見上げ言うと、リディはごくりと喉を鳴らした。
「やっぱり、術士って凄いのね」
確かにラグならそのくらい出来そうだけれど。
(本当に、大丈夫なのかな)
ハンモックの両端を強く握り締めながら私も何も見えない天井を見上げた。
船の軋む音に紛れて誰かの大声や足音が切れ切れに聞こえてくる。
グリスノートたちが海のプロだということはわかっている。でも、もっと頑丈な船を知っている私にはどうしても心許なく思えてしまう。
(私にも何か出来ることがあればいいのに)
でも今私が出て行っても足手まといにしかならない。それがわかっているから待つことしかできない。
それはきっとセリーンもリディも一緒だろう。――と。
「揺れが収まったら甲板に出てみよう。今度こそあの子に会えそうだ」
こんな時だというのにセリーンの声が急に生き生きとしだして思わず苦笑してしまう。
――そうだ。ただ不安がっていてもしょうがない。今はとにかくラグやグリスノートたちを信じて祈るしかない。
(皆頑張って! どうか無事で……!)
私は呪文のように何度も繰り返し祈り続けた。