My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
――それから数十分ほどが過ぎただろうか。
「……静かになったな」
セリーンが呟いた。
先ほどに比べると揺れは大分収まっていた。これならハンモックから降りてもなんとか立っていられそうだ。
ラグが本当に術で何とかしてくれたのか、それとも嵐から抜けることが出来たのだろうか。
この暗い部屋にいては本当に何もわからなくてもどかしい。
「よし、様子を見に行ってみるか」
「え」
セリーンがハンモックからひょいと立ち上がった。
「ここにいては何もわからん」
「それは、そうだけど」
勝手に動いてしまって大丈夫だろうか。
「私も、皆のことが気になるわ」
続いてリディもハンモックから降りてしまった。
「誰の声も聞こえないのも気になるし」
言われて気づく。確かに先ほどまで響いてきていた大声や足音が全く聞こえない。
耳に入ってくるのはギィギィという船体の軋む音だけだ。
ざわざわと胸が嫌な音を立てて、私もハンモックから立ち上がった。