My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
6.救出
雨が瞬く間に全身を濡らしていく。
目を閉じて私は何か月ぶりかにあの歌を口ずさみ始めた。
私は今 空へと舞い上がる
高く 高く もっと高く
この世界に来てすぐ、小さなラグと一緒にお城から逃げたときに歌ったあの歌。
あのときはただ必死で、落ちてしまわないように歌うので精一杯だった。
そして結局途中で失敗してラグに助けてもらうかたちになった。
今ここでフィルくんを助けられなかったら、きっとラグは酷く自分を責めるだろう。
彼は優しいから。
たった数ヶ月だけれどいつも一緒にいて、いつも傍で彼を見ていてそれがわかってしまうから。
だから今は、私が彼を助けたい。
――これ以上、彼が自分を責めることのないように。