My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
この雨を超えて あの旗よりも高く どこまでも高く
大きなこの白い翼 羽ばたかせて
背中が熱くなるあの感覚。
あんなに激しく耳を打っていた雨音が歌声に掻き消えていく。
目を開けると自分の髪が銀に輝いているのがわかった。
そのことに安堵した瞬間、ふわりと風に持ち上げられるように足が甲板を離れた。
あのときよりもうまく飛べる。そんな絶対的な自信があった。
そのまま私の身体は一気に空高く舞い上がった。
――誰かの叫び声を聞いた気がしたけれど、今は気にならなかった。
水中を泳ぐような感覚で船の上空から海の方へ移動していく。
風は止んでいても、やはりまだ海面は随分と荒れていた。
真っ黒な不安になる海の色。でも幸いなことに銀の輝きが明かりとなって、ある程度の範囲を照らしていた。
これならばと私は徐々に高度を下げていきながら、フィルくんの姿を捜しはじめた。