My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
しかしそこで気が抜けてしまったのだろうか、フィルくんはふっと目を閉じ掴んでいた手からも力が抜けたのがわかった。私は慌ててその身体を抱きしめる。
彼はぐったりとしていたが、ちゃんと息遣いが聞こえてきてほっとする。
――よし!
あとはもう一度歌って、彼を船に連れて戻るだけだ。
私は再び歌い始める。するとすぐに髪はまた輝いてくれた。
フィルくんの身体をしっかりと抱きしめながら私は再び海面を離れ空へ舞い上がった。
彼の重さは感じない。あのときだってラグと一緒に飛べたのだ。だから大丈夫。
ふと見れば船から大分離れてきてしまっていた。
そして先ほどよりも辺りが明るいことに気づく。分厚い雲から幾筋もの光が差していた。夜が明けたのだ。