My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
あと少しだ。船からこちらを見つめる大勢の人垣が見えた。そして何人かがボートに乗って海に出ているのが見て取れた。
――あぁ、きっと帰ったらラグにこってり怒られるだろうな。グリスノートやリディにもなんて説明しようか。そんなことが急に心配になってくる。
ボートに小さなラグとセリーンの姿が見えて、そのときだった。
ビュオッ!!
「――きゃっ!」
急な突風に襲われ、私の身体は船とは直角の方向へと吹っ飛ばされた。――違う。強引に引っ張られた。
この風に包まれたような感覚は知っている。これは風の術だ。
ラグが戻ったのだろうか。でも、それならなぜ私の身体は船とは違う方へと向かっているのだろう。
耳をつんざく酷い風音の中なんとか目を開けて向かう先にもう一隻の船を見た。
あの特徴的なピンクの旗は。
(アヴェイラの船……!?)