My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「っ、」
やはり彼女は私が銀のセイレーンだとわかった上で引き寄せたのだ。
「――ア」
「おっと、今は歌わないでおくれよ」
彼女はスラリと腰から抜いた剣をこちらに突き付けてきて、私は口を噤んだ。
「別に殺しやしないさ。ただちょっとあんたに話があってねぇ」
(話……?)
「っと、その前に……なんだい、フィルじゃないか」
彼女は私の傍らに横たわるフィルくんに視線を移し、その眉間に皴を寄せた。
――そうか、元々同じ仲間だったからフィルくんのことも知っているんだ。
「怪我はなさそうだね。お前たち! 今すぐこの子を介抱してあげな!」
「へい頭ぁ!」
バタバタと数人の海賊たちがこちらへ集まってきた。
よく見たら他にも10人くらいの海賊たちが遠巻きにこちらを見つめていた。
「こりゃいかん! すぐに温めねぇと」
「頼んだよ」
「へい!」
一人のガタイのいい男性がフィルくんを抱え他何人かと船内へと急ぎ入って行った。
きっと、これでフィルくんは安心だろう。
「カノン、と言ったっけねぇ?」
視線を戻すとアヴェイラが腰を下ろし私をじっと見つめてきていた。その眼光の鋭さにごくりと唾を飲み込む。