My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「海賊をやめるためにふりをして欲しいって頼まれただけで!」
必死に答えると、アヴェイラはじっと私の瞳を見つめてから口を開いた。
「それは本当だろうね? 嘘だったらひどいよ」
剣先をちらつかせて言われ私は何度も強く頷く。
――プロポーズされたなんて口が避けても言えない。
いや、しかしグリスノートは銀のセイレーンを殺したいほど憎んでいるのだ。バレてしまった今あのプロポーズは確実に無かったことになるだろう。
(だから、嘘じゃない!)
「……そうかい。なら信じよう」
そうしてアヴェイラは再び立ち上がった。
「じゃあ、あの、帰して……」
「話があるって言ったろ。それまでは拘束させてもらうよ」
彼女は仲間たちが持ってきたロープで素早く私の手首を縛り上げ、口も布でぐるぐると何重にも巻かれてしまった。
(またこれ……!?)
いつか同じ目に遭ったときのことを思い出して涙が出そうになる。
「お前たち! このままアジトに戻るよ!」
「アイアイサー!」
それを聞いて青ざめる。――アジト!?
思わず立ち上がってまだ雲の多い夜明けの海を見渡し、なんとか見つけたグリスノートの船はもう米粒ほどに小さくなってしまっていた。
「用が済んだらちゃんと帰してやるさ。安心しなよ、銀のセイレーン」
にっこりと機嫌良さそうにアヴェイラが笑いかけてきたが、笑い返せるはずもなく、私はまた呆然とその場に座り込んだ。