My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「あいつを見返してやりたいんだよ! いつもグレイスグレイス言いやがって! このあたしが同じように歌を使えるようになったらあいつがどんな顔をすんのか見てやりたいのさ!」
そこまで一気に言い切ると彼女は腕を組んでふんっと鼻を鳴らした。
(えーっと……?)
あいつとは、間違いなくグリスノートのことだろう。
グレイスの歌声を美しいと大絶賛し溺愛しているグリスノートが頭に浮かぶ。
“使って”、と言うからつい悪いふうに考えてしまったけれど。
「それは、グリスノートの前で歌ってみせたいってことですか?」
「そうだよ! だから、セイレーンであるあんたに教えて欲しいって言ってるんだ。……それとも、あたしには無理なのかい?」
急に不安そうな顔をされて、私はぶんぶんと首を横に振った。
「無理じゃないです!」
「本当かい?」
その顔が期待に満ちて、こちらもなんだか胸が熱くなってきた。
(要は、グリスノートに振り向いて欲しいってことだよね!)
そう思ったら俄然、彼女を応援したくなった。