My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
急にその顔が険しくなって嫌な予感がした。そして、その予感は直後的中することになる。
「ラグ・エヴァンスって術士だよ。知ってるかい?」
動揺が顔に出ないよう精一杯平静を装い、私は口を開く。
「なんで、その人が……」
「あのレーネの街を消した張本人だよ。奴のお蔭で術士の印象が一気に悪くなっちまった。悪魔のような術士、魔導術士ってね。そのせいであたしが今までどれだけ酷い目に遭ってきたか……」
ぎりり、とその拳が私の目の前で強く握られる。
ドクドクという心臓の音が聞こえてしまわないよう、私は胸を押さえた。
「……でも、もしかしたら、その人も苦しんでるかも」
「は?」
アヴェイラと目が合った、そのときだ。俄かに部屋の外が騒がしくなった。