My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「ぶぅ?」
いつの間にか私の頭に乗っていたブゥがこちらを覗き込んでいて、少しだけほっとする。
ブゥが来てくれて本当に良かった。今の私にはとても心強い味方だ。
(ラグが行けって言ってくれたのかな……?)
向こうの船の様子が気になったが、きっとヴォーリア大陸でまた会えるはずだと私はアヴェイラの向かう先を見つめた。
アヴェイラが奥の部屋に入っていき、私もその後に続く。
その部屋には先ほどフィルくんを抱えていったガタイのいいおじさんがいて、笑顔でアヴェイラと視線を合わせた。そして。
「久しぶりだな、フィル」
「アヴェイラ……?」
暖かそうな毛布に包まれハンモックに横になっていたフィルくんが、彼女を見上げて呆けたような声を出した。
この状況がまだ理解出来ていないのだろう。気づいたら違う船に乗っているのだ。無理もない。
「フィルくん、大丈夫?」
私も声を掛けるとその瞳がゆっくりとこちらに移って――。
「ひっ!?」
彼はそんな引きつったような声を上げた。
怯えた瞳が私を見ていて、一瞬その理由がわからなかった。