My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「ぎ、銀の……」
(――あ、そうか)
その震えた声を聞いて理解した私はゆっくりと後退る。
アヴェイラがそれに気づいてこちらを振り向いた。
「カノン?」
「あ、私は部屋の外で」
するとアヴェイラはもう一度フィルくんの方に向き直り、大声で怒鳴った。
「なんだいフィル、あんた助けてもらったのに礼のひとつも言えないのかい!?」
その大音量にこっちがびっくりする。フィルくんを看てくれていたおじさんも少しだけ驚いた様子だ。
「助け……?」
「そうだよ! あんた、海に落ちてカノンに助けてもらったんだろう!?」
フィルくんの瞳がまたゆっくりとこちらに戻ってきて、私はなんとか笑顔を作る。
「……ありがとう、ございました」
途切れ途切れの言葉に私は慌てて首を横に振る。
「ううん、目が覚めて良かった」
でもその後彼はすぐに毛布を頭から被ってしまった。
小刻みに震えるその身体を見てなんだか酷く申し訳ない気持ちになったけれど、でも本当に良かったと私は胸を撫でおろした。