My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「術士だからって理由であたしはひとり故郷を追い出されてね、行く当てもなく適当に乗り込んだ船が海賊に襲われたのさ」
「それがグリスノート?」
「そう、海賊団ブルーだった。その頃のあいつはまだ下っ端も下っ端だったけどね」
ふっと小さく笑ったアヴェイラはとても優しい表情をしていた。
「海賊の中に同じ年ごろのあいつの姿を見つけてね、海賊になるのも悪くないかと思ったんだ。そんで思い切ってあたしも仲間に入れてくれって声を掛けたのさ」
「すごい勇気だね」
「だろう? あいつはびっくりしてたけど、すぐに長、その頃のブルーの頭に話を通してくれてね」
オルタードさんのことだろう。
「こっちの事情を聞いた頭は女は海賊にはなれないが来いって言ってくれてね、アジトに連れて行ってくれたのさ。その場所はあたしを受け入れてくれた。まぁ、全員が全員じゃなかったが、あそこでの暮らしは楽しかったねぇ」
懐かし気に微笑むアヴェイラ。
――あのイディルで彼女がリディやエスノさんたちと楽しげに暮らす光景を思い浮かべる。あの騒がしい宴に何年か前まではきっと彼女の姿もあったのだ。
「なんで、アヴェイラはそこを出て海賊になろうって思ったの?」
リディから大体の話は聞いていたが、アヴェイラから直接聞いてみたかった。
するとその顔から笑みが消えてしまった。