My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
この呼び方に私は今ほとほと困っている。船員たち皆が私のことを『姐さん』『カノンの姐さん』と呼ぶのだ。最初呼ばれたときはセリーンのことだと思い、自分のことだと気づくまでに随分と時間がかかってしまった。
だがコードさんは少しだけ苦笑して答えた。
「やぁ~、一応船長の命令なんで、俺はそれに従うしかないっスねぇ」
「そうですか……」
がっくりと肩を落とす。
――そう、私を『姐さん』と呼べと言い出したのは、あのグリスノートなのだ。
出航した日の夜。私は早々に寝込んでいてその場にはいられなかったが、グリスノートは私が嫁というのはオルタードさんや町の皆を納得させるための嘘だったと皆に告げたそうだ。そこまでは良い。でも……。
「だが、俺の嫁候補ってのは変わらねぇからよ。てめぇら手ぇ出すなよ?」
そう言ってのけたらしく、しかもこれからは私のことを『姐さん』と呼べと命令したらしいのだ。